社外役員メッセージ

(全体更新日:2023年2月2日)

目次

※2022年12月のメッセージを掲載しています。

※2021年11月のメッセージを掲載しています。

社外役員メッセージ
社外取締役 柳 正憲

圧倒的な沿線資源の活用とグローバル展開への期待 社外取締役 柳 正憲

恵まれた沿線環境を経営につなげる

社外取締役として近鉄グループの経営に携わっていて感じることは、鉄道沿線が文化・自然の魅力にあふれ、グループ経営の広がりにおいて圧倒的なものがあり、それらを活かしていきたいということです。

鉄道に関しては、民鉄最長の路線を有し、京都・奈良・伊勢など歴史上の価値がきわめて高い地域を結んでおり、これは大変な強みと言えます。また、鉄道・バス・タクシーなどの運輸業、様々な形態の不動産業・流通業、さらには国際物流業や製造業と、実に幅広い分野で事業を展開する企業グループであり、この点でも他の追随を許しません。

コロナ禍によってグループ全般にかつてない深刻な打撃を受けましたが、根幹となる鉄道事業で運賃改定実施の認可を得たことで、経営の健全性確保に目途がつきました。これを端緒に、今後の持続可能な経営に向けて、鉄道グループとして発展してきた経営の原点に返って、グループの力を結集して以下の2点に取り組むことが肝要と考えます。

まず、復活してきた日本各地からの観光客やインバウンドをしっかり沿線に誘客することです。アフターコロナの観光地間競争は激しくなりますが、あまり知られていないエリアを含めて近鉄沿線の魅力は実に多彩かつ深いものがあります。国を挙げて観光立国を進める流れの中で、関係者が力を合わせて第一級の観光資源に磨きをかけることで、来訪者を増やし、再訪してもらうことができると考えます。

もうひとつは潜在的な魅力を活かした地域づくりです。英国のエコノミスト誌が行った「世界の住みやすい都市」2022年調査で、大阪市はアジアトップとなりました。森記念財団の都市戦略研究所が行った「日本の都市特性評価2022」においては、総合スコアで大阪市が1位、京都市が2位、名古屋市が5位となっています。こうした魅力ある都市に鉄道ターミナルがあることを活かし、人口減少社会においても、あらためて沿線への学校誘致や住宅開発を通じて定住人口の増加を図ることにより、沿線の活力を高める必要があります。

新たなライフスタイルとして二拠点生活が注目されており、都市・観光双方の魅力にあふれる近鉄沿線は生活の二拠点目、あるいは別荘地としての可能性が大きいと考えます。

グローバル経営への期待

この度の近鉄エクスプレスの完全子会社化は、グローバルなグループ展開に向けての大いなる転換点です。国際物流業界において確固たる地位にある近鉄エクスプレスは大変貴重な企業であり、連結経営に加わること自体に大いに意義がありますが、今後、当社グループはBtoBや海外の分野に積極的に進出することを目指すべきであり、その際同社は大きな成長ドライバーとなるものです。

そして、大きなグローバル課題として、脱炭素社会の実現があります。環境負荷の小さい鉄道事業を営む者として、また、世界を視野に事業拡大を図るグループとして、太陽光発電の拡大などによって脱炭素社会に寄与することは、社会への貢献面でも企業経営面でも非常に大事です。

私は、日本開発銀行・日本政策投資銀行に在職中、海運を振り出しにエアライン・ホテル・鉄道・不動産と幅広い業種を担当させていただきました。当社グループはその大半の業種を営んでおり、産業振興の観点から果たしてきた知見を当社グループの経営に役立てたいという思いで、社外取締役としての務めを果たしています。

これからも沿線を振興しグローバル世界に挑戦する近鉄グループの発展に尽力してまいります。

社外役員メッセージ
社外監査役 前田 雅弘

近鉄グループにおける経営の健全性確保のために 社外監査役 前田 雅弘

社外監査役に期待される役割

私は、大学で長年、会社法制について研究・教育を行ってきました。監査役は、取締役の職務執行が適法に行われているかをチェックするのがその職務であり、私は社外の監査役として、経営から高い独立性を持った立場から、主に監査役会での活動を通じて、経営の健全性確保に貢献できるよう、職務を行っています。一度不祥事が発生すればそのダメージは計り知れません。株式市場からの利益確保の要請は強まっており、経営の効率性を追求することはもちろん大切ですが、まずは適法な経営であることが大前提であり、そこで期待されるのが監査役の役割なのだと思います。

近鉄グループホールディングスでは、毎月開催される監査役会で、当社の各種会議に出席している常勤監査役から情報の共有がなされるとともに、監査役のスタッフ部門である監査役室から情報提供を受けているほか、内部監査部門や会計監査人から報告を受ける機会もあるなど、監査の体制が十分に整備されており、大変恵まれた環境にあると感じています。

慎重さと大胆さを兼ね備えた近鉄グループの経営

近鉄グループでは、全般的には、慎重で安定的・手堅い運営がなされていると感じています。しかし他方で、経営を左右するような重大な局面では、大胆かつ迅速な意思決定がなされます。コロナ禍で危機的な状況の中、中期経営計画を見直し、ホテル事業の二軸化経営のほか、各事業での事業構造改革などを断行し、早期の業績回復を実現したことはその表れです。このように、手堅さと大胆さを兼ね備えた経営に近鉄グループの魅力があり、このことは、「『いつも』を支え、『いつも以上』を創ります」という経営理念に根ざしたもののように思われます。

今後の近鉄グループには特に、中期経営計画の重点施策の1つである「事業ポートフォリオの変革」に期待しています。新たな感染症や想定以上の大災害など、将来のリスクは予測しきれません。今般の近鉄エクスプレスの完全子会社化に見られるように、M&Aや新規事業開拓を通じて事業の多様化を進め、持続的な成長とリスク耐性の強化を図っていくことが重要だと考えています。

今日の若者気質と社会に求められる人財

大学で教鞭をとって35年余りになりますが、この間、若者の気質もずいぶん変化しました。特にリーマンショック以降、就職の苦労や将来への不安などから、大学生活に余裕がなくなっていると感じます。学生時代は本来、試行錯誤を繰り返しつつ、自らの適性をじっくり見極めるべき貴重な期間です。早くから就職や資格取得に目を向けざるを得ないのは気の毒に思います。

一方、企業経営では目先の利益追求だけでなく、サステナビリティが重視され、より長期的・複眼的な視点での判断が求められるようになっています。

大学生の皆さんには、難しい事情もあるとは思いますが、大学生の間に関心の幅を広げ、幅広い視野を持った人財として社会に貢献してほしいと願っています。そして、社会を支えるサステナブルな事業を営む近鉄グループには、多様性に富む人的資本経営の一層の推進を期待しています。

社外役員メッセージ
社外取締役 岡本 圀衞

近鉄グループの特長を活かし、豊かな社会に貢献を 社外取締役 岡本 圀衞

恵まれた観光資源を活かしつつ、社会への貢献を果たす

私は歴史に関心があり、若い頃、大阪で勤務していた時、休日になると近鉄を利用して、奈良や京都によく小旅行をしていました。時を経て現在、社外取締役として経営に携わっていますが、沿線が歴史文化や自然の宝庫であることが、大きな魅力であると感じています。今はコロナ禍で甚大な影響を受けていますが、観光立国を目指す日本において、沿線の豊かな観光資源を活かしてインバウンドの方を含め誘客していくことが、近鉄グループの重要なテーマと捉えています。
 一方、沿線が広いということは、人口集積が多い地域ばかりではなく、経営面ではマイナスの要因ともなります。しかし、鉄道は社会の公器であり、収益性との兼ね合いに配慮しながら、社会のために役割を果たし続ける必要があります。そのために3つの点に留意すべきと考えています。
 一つ目はSDGsです。全世界的な課題としてSDGsに掲げられた17のテーマの中で近鉄グループとして特にどの点に寄与していくかを役員および社員一同が共有し、努力することが大切です。とりわけ気候変動やDX等は今日的に重要な課題ですので、率先して取り組んでいかねばなりません。
 二つ目はCS、お客さま満足です。通り一遍のお客さま満足への取組みにとどまらず、他社と比べて、特にどこにポイントを置いてお客さまを大切にしているか、はっきりさせる必要があります。
 最後にES、従業員満足です。経営陣が夢を語り、従業員が熱い思いをもって頑張るという、いわば経営陣・従業員双方の固い絆があって、CSの向上にもつながっていくのだと思います。

グループ経営は独立と連携のバランスが必要

人口減少のもとで事業をどう進めるかは大きな課題です。まず、やはり観光への注力です。国内外問わず観光客にお越しいただくことが、近鉄グループのビジネスチャンスとなります。また、沿線住民の方に対しては、ワンストップで近鉄グループに生活の全てをお世話になろう、という厚い信頼をお持ちいただけるような戦略が大切です。様々な機能が集積しているあべのハルカスは、天王寺を基点に関西中南部の生活のクオリティアップに貢献しており、こうした取組みを広げる必要があります。
 そこで大切になるのがグループ経営です。人口減少、少子高齢化が進む中、事業間の連携が極めて重要です。一方で、近鉄グループは、特性が異なる幅広い業界にわたっていることから、各業界で競争し優位に立つためには、事業ごとに独立して強くなる必要があります。ホールディングス体制のもと、グループ化と独立性のバランスをいかにとり、効率的・効果的なグループ経営を実現していくかが大切です。

社外取締役として、第三者視点で経営に貢献

社内だけではどうしてもその会社固有の論理で動いてしまいがちですが、私は社外取締役の立場から、これまで培ってきた見地や価値観を踏まえ、できるだけ第三者視点で経営に関する提言をすることを心がけています。その際、今の社会が求めていることをベースにするとともに、私自身、金融機関に身を置いてきた経験を踏まえ、事業の健全性やリスクの面からの発言を中心に行っています。
 取締役会の議論を通じて、社会に貢献し続ける近鉄グループであるよう働きかけていきます。

社外役員メッセージ
社外取締役 片山 登志子

沿線の人々から愛される企業グループとしての特長を活かした経営の強化に貢献したいと考えます 社外取締役 片山 登志子

長期的な視点から、くらしのあり方に対する提案が重要

私は弁護士としての専門的な知見を踏まえて、近鉄グループの中長期的な持続的成長に資する提言を行うことが重要と思っています。特に消費者と共創・協働して近鉄グループの多様な事業の社会的価値を向上させる経営、すなわち消費者志向経営が私の専門分野の一つであることから、消費者と企業との双方向のコミュニケーションに基づいた新たな気づきを経営判断の場にもたらしたいと考えています。
 近鉄グループの特長として、移動、住、⾷、観光など全ての面で人々の生活を支えており、沿線住民から長年にわたり愛されてきた企業グループであることが挙げられます。その役割を果たすべく、コロナ禍においても財務や経営の健全性を確保するための意思決定を取締役会が迅速に行っていることが評価されます。
 近鉄グループにおける今後の課題としては、コロナ禍がなおも続くと予想され事業環境が見通しにくい中で、消費者の生活の変化に寄り添い、企業グループとしての特長、強みをさらに高めていくことが挙げられます。沿線住民のくらしに密着した存在として、消費者ニーズに応えていくとともに、他方で、地球環境問題への対応も含めた社会全体の将来を見すえて、長期的な視点からくらしのあり方を提案していくことが求められています。人々が将来に対して夢を持つことができ、時代の先々にわたって安心してくらすことができる沿線地域を創出していくことが重要な課題だと思います。

「共創による豊かな社会の実現」に向けた取組みに期待

そのために、近鉄グループとして取り組むべきことは、消費者志向経営の追求であると考えます。従来、企業の多くはマーケティング活動の一環として顧客の声を聴くモニター制度などを行ってきましたが、消費者の満足と信頼を得るためには、消費者との本音での話し合いを通じた双方向のコミュニケーションを重視すべきです。具体的には、少人数での対話の場や消費者とのあらゆる接点を通じて、消費者と企業がお互いの考えをもっと知り、納得するまで話し合いを行い相互理解を深めていくというものです。時には意見が対立することもありますが、対話を重ねる中で、互いに新たな気づきを得るとともに、これからの社会のありようや真の豊かさについて一緒になって考え、答えを導き出し、協力して新しい豊かな社会の創造を目指すところに価値があります。
 その点、近鉄グループでは中期経営計画に「共創による豊かな社会の実現」を掲げており、私が重視している消費者志向経営の実践に向けて、大いに期待をしているところです。加えて、時代の変化が加速する中で、社会課題に一企業だけで対応していくのは難しい時代となっています。そのため、消費者をはじめ、外部の企業や自治体など幅広いステークホルダーとの連携・協働が不可欠です。
 今後、コーポレートガバナンスにおいて社外取締役の重要性が増す中、責任の重さを理解した上で、取締役会のさらなる活性化に向けた貢献などを通じて、使命をしっかり果たすことで、近鉄グループの企業価値の向上に努めてまいります。

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