秋の特別展
特別展 いぬねこ彩彩 ―東アジアの犬と猫の絵画―
- 会期
- 2023年10月7日(土)~ 11月12日(日)
※一部展示替えあり。
【前期】10月7日(土)~ 10月22日(日)、【後期】10月24日(火)~ 11月12日(日)
- 休館日
- 月曜日休館(ただし、10月9日〈月・祝〉は開館し、翌10日〈火〉が休館)
- 開館時間
- 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 入館料
-
一般 950円 高校・大学生 730円 小学・中学生 無料
※20名以上の団体は相当料金の2割引で引率者1名無料
※「障がい者手帳」をお持ちの方とご同伴者1名2割引
共催:毎日新聞社
人間にとって親しみ深い動物である犬と猫は、東アジアでは古くから絵画のモチーフとしても人気を博しました。それらは、必ずしも心を憩わせる愛らしい姿のみを求められて生まれたのではなく、日々の幸福への祈り、異国への憧れ、権威の象徴、社会風刺などといった、人間の様々な思いを託されることで、しばしば描かれてきたのです。
本展観では、中国、朝鮮半島、日本における、12~20世紀に制作された犬図・猫図を通して、東アジアにおける多彩な動物画の一様相をご覧いただきます。各地域の歴史・文化のもとで育まれた犬と猫のモチーフは、それぞれが独特な趣を備えています。しかしながら、それらを一堂に集めたとき、個々のモチーフや表現などに共通するものがあると気づかされます。それらは、東アジアにおける文物の受容史を物語るとともに、先述したような様々な背景のもと、時に選択的に用いられました。また犬と猫をより活き活きと、魅力的に表したいという画家の創意工夫、あるいはそれを求める鑑賞者の声などにも答えながら、発展していったと考えられるのです。
重要文化財5件、重要美術品1件を含む、計63件の犬と猫にまつわる絵画作品を通して、東アジアで花開いた豊かな動物画の世界を、どうぞお楽しみください。
展覧会の構成
第一章 中国の犬と猫の絵画
中国において、犬と猫のモチーフは、子孫繁栄や長寿などのおめでたい寓意(吉祥)をともなって、花木竹石などと共にしばしば描かれました。南宋(1127~1279)や明(1368~1644)の宮廷画家たちは、細緻な描写による、華麗で優美な作品を多数制作しました。また文人達は、簡略な描写で、墨の濃淡や筆線を活かして、身近な存在としての犬と猫の姿を描き出しました。中国のそれぞれの時代に生み出された犬図・猫図は、朝鮮半島や日本にも伝わり、それぞれの国での犬図・猫図の成立を促すことにもなるのです。
重要美術品
春苑遊狗図
紀鎮筆 明時代(15~16世紀)
黒川古文化研究所蔵
重要文化財
猫児図(「安晩帖」第9図)
八大山人筆 清・康熙33年(1694)
泉屋博古館蔵
老圃秋容図 沈南蘋筆
清・雍正9年(1731)
静嘉堂文庫美術館蔵
(画像提供:[公財] 静嘉堂/DNPartcom)
第二章 朝鮮半島の犬と猫の絵画
朝鮮半島では、朝鮮王朝時代(1392~1897)に、中国絵画を淵源とする吉祥的で華やかな作品が、宮廷を中心に描かれたほか、おもに民間で受容された、素朴で温かみのある「民画」の趣をもつ犬図・猫図が制作されました。中でも宗室画家の李巌(1499~1545~?)は、水墨を基調とした、文人的な雅趣のある動物画を制作しました。この李巌の犬図は、日本でも人気を博しました。
花下遊狗図 李巌筆
朝鮮・朝鮮王朝時代(16世紀半ば)
日本民藝館蔵
猫図
朝鮮・朝鮮王朝時代(18世紀)
高麗美術館蔵
第三章 日本の犬と猫の絵画
三―一. 狩野派をはじめとする画家たちの古画学習
日本では、室町~江戸時代、中国の文物を至高とする唐物趣味のもと、南宋の動物画などが珍重され、将軍や大名達の間で賞玩されました。特に、将軍家のお抱え絵師として活躍した狩野派は、中国の犬図・猫図を、北宋の徽宗皇帝や南宋の李迪、毛益などといった著名画家の伝来とともに尊び、真摯にその画を学習することで、これまでにない新たな犬図・猫図を制作していったことが、現存する模本類や作品から窺えます。こうした狩野派による古画学習の蓄積は、後の日本における多彩な犬と猫のイメージへとつながっていきます。
毛益流遊狗図(「百流之絵鑑」より)
狩野昌運筆
日本・江戸時代(17~18世紀)
福岡市美術館蔵 【後期展示】
牡丹に猫図 狩野養信筆
日本・江戸時代(19世紀前半)
公益財団法人摘水軒記念文化振興財団蔵(府中市美術館寄託)【前期展示】
三―二.広がる犬と猫のモチーフ
前述の狩野派による真摯な古画学習、18世紀に来日し長崎で画を講じた清朝の画家・沈南蘋の、迫真的で鮮麗な動物画、そしてしばしば中国画と誤認されつつも、高い評価を得て伝えられてきた朝鮮王朝の動物画。こうしたものを資としながら、室町~近代の日本では多彩な犬と猫のイメージが生み出されます。例えば、架空の霊獣として描かれた麝香猫、円山応挙などのコロコロと愛くるしい子犬、そして優雅な姿の洋犬などがあげられます。日本における犬図と猫図は、16~19世紀東アジアにおける国境を越えたイメージの伝播と受容を考えるうえで、非常に重要な役割を担っているといえるのです。
犬図 俵屋宗達筆
日本・江戸時代(17世紀)
西新井大師總持寺蔵
時雨狗子図 円山応挙筆
江戸・明和4年(1767)
府中市美術館蔵
出陳品 63件
第一章 【中国の犬と猫の絵画】 |
重要文化財 |
蜀葵遊猫図・萱草遊狗図 |
伝毛益筆 |
南宋時代(12世紀) |
大和文華館蔵 |
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犬図 【前期展示】 |
李迪筆 |
南宋時代(13世紀) |
個人蔵 |
重要文化財 |
麝香図(「唐絵手鑑筆耕園」のうち【前期展示】) |
伝毛松筆 |
明時代(16世紀) |
東京国立博物館蔵 |
重要美術品 |
春苑遊狗図 |
紀鎮筆 |
明時代(15~16世紀) |
黒川古文化研究所蔵 |
重要文化財 |
猫児図(「安晩帖」第9図) |
八大山人筆 |
清・康熙33年(1694) |
泉屋博古館蔵 |
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老圃秋容図 |
沈南蘋筆 |
清・雍正9年(1731) |
静嘉堂文庫美術館蔵 |
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驚艶図 |
徐悲鴻筆 |
中華民国・民国時代(1935) |
京都国立博物館蔵 |
第二章 【朝鮮半島の犬と猫の絵画】 |
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花下遊狗図 |
李巌筆 |
朝鮮・朝鮮王朝時代(16世紀半ば) |
日本民藝館蔵 |
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猫図 |
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朝鮮・朝鮮王朝時代(18世紀) |
高麗美術館蔵 |
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雀猫図 |
卞相壁筆 |
朝鮮・朝鮮王朝時代(18世紀) |
東京国立博物館蔵 |
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狗子図 |
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朝鮮・朝鮮王朝時代(18世紀) |
日本民藝館蔵 |
第三章 【日本の犬と猫の絵画】 |
三―1.狩野派をはじめとする画家たちの古画学習 |
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「李迪犬図」模本 【後期展示】 |
狩野探幽模 |
日本・江戸時代(17世紀) |
個人蔵 |
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倣李迪狗子図 (「和漢流書手鑑」より) |
狩野常信筆 |
江戸・宝永元年~6年(1704~09)頃 |
個人蔵 |
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百流之絵鑑 |
狩野昌運筆 |
日本・江戸時代(17~18世紀) |
福岡市美術館蔵 |
三―2.広がる犬と猫のモチーフ |
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松下麝香猫図屏風 |
伝狩野之信筆 |
日本・室町時代(16世紀) |
サントリー美術館蔵 |
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犬図 |
俵屋宗達筆 |
日本・江戸時代(17世紀) |
西新井大師總持寺蔵 |
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狗子図 |
与謝蕪村筆 |
日本・江戸時代(18世紀) |
個人蔵 |
|
時雨狗子図 |
円山応挙筆 |
江戸・明和4年(1767) |
府中市美術館蔵 |
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親子犬図 |
張月樵・長沢蘆雪筆 |
日本・江戸時代(18世紀後半) |
個人蔵 |
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厖児戯箒図 |
伊藤若冲筆 |
日本・江戸時代(18世紀) |
鹿苑寺蔵 |
など
出陳目録:PDF
会期中のイベント
講演会 |
11月5日(日) 午後2時・講堂 |
「かわいいだけじゃない―いぬねこの本流 日本の犬猫表現の展開における狩野派の役割」 |
神戸大学大学院 人文学研究科 専任講師 野田麻美氏 |
日曜美術講座 |
10月15日(日) 午後2時・講堂 |
「中国と朝鮮半島の犬図・猫図について」 |
当館学芸部員 都甲さやか |
列品解説 |
毎週土曜日 午後2時から (当館学芸部による)
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※講演会・日曜美術講座は、〈定員〉当日先着100名(予約不要)です。
※何れも参加は無料ですが、入館料が必要です。
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●無料招待デー: 10月31日(火)大和文華館開館記念日
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