文字をしたためること、そこから生み出される「書」は、文字そのものの意味と造形を兼ねた、特有の芸術性が認められます。一文字一文字に祈りが込められ写された装飾経、連綿と記された仮名に流麗な美しさが見られる古筆切、個性的な文字や内容に人柄が表れる墨蹟や書状の数々。目的は異なりますが、何れも他者に「伝えること」が強く意識されており、文字の形、さらにはそれをしたためる料紙に創意工夫が凝らされ、筆者の高い美意識を味わうことが出来ます。
こうして生み出された「書」の美しさは人々を魅了し、現在に伝えられてきました。その多くが本来の目的を離れ、内容だけでなく筆者や伝来に価値が見出され、たとえ一部分であっても鑑賞に適するよう表装されています。あるいは書状のように、その時代の様相を具体的に知る手がかり、史料としても重要です。当館に所蔵される双柏文庫は、日本中世史研究者・中村直勝氏が収集した古文書コレクションであり、中世・近世の公家や武家、茶人の書状が充実しています。
展覧会ではこれらの館蔵品に特別出陳品を交え、「書」に見られる多様な美意識に迫ります。個々の作品が持つ「鑑賞」「愛玩」の歴史にも思いをはせつつ、御覧頂けましたら幸いです。
【古写経・写経切】 | ||||
重要美術品 | 大般若経(薬師寺経) | 奈良時代 | 大阪市立美術館 | |
華厳経断簡(二月堂焼経) 仁王経断簡 雑阿毘曇心論断簡(中尊寺経) 法華経断簡 |
奈良~平安時代 | 大阪市立美術館 (会期中巻替あり) |
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重要文化財 | 法華経巻第一 方便品第二 | 平安時代 | 和泉市久保惣記念美術館 (11月17日~12月3日展示) |
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重要文化財 | 法華経巻第三 化城喩品第七 | 平安時代 | 和泉市久保惣記念美術館 (12月5日~12月24日展示) |
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大金色孔雀王咒経(神護寺経) | 平安時代 | 大阪市立美術館 | ||
華厳経断簡(泉福寺経) | 平安時代 | 個人 | ||
一字宝塔経断簡 | 平安時代 | 個人 | ||
【古筆切】 | ||||
桂本万葉集断簡(栂尾切) | 平安時代 | |||
和漢朗詠集断簡(伊予切) | 平安時代 | |||
伊勢集断簡(石山切) | 平安時代 | |||
【禅僧の書】 | ||||
重要文化財 | 墨蹟 無相居士像賛 | 中国・南宋時代 | ||
墨蹟 傑堂号 | 寂室元光筆 | 南北朝時代 | ||
墨蹟 七言 | 清拙正澄筆 | 南北朝時代 | ||
【天皇・公家の書】 | ||||
花園天皇宸翰断簡 | 南北朝時代 | |||
洞院公賢書状 | 南北朝時代 | |||
三条西実隆書状 | 室町時代 | |||
【武家の書】 | ||||
足利尊氏自筆御神号 | 南北朝時代 | |||
足利義満書状 | 室町時代 | |||
狩野探幽書状 | 江戸時代前期 | |||
【茶人の書】 | ||||
千少庵書状 | 桃山時代 | |||
古田織部書状 | 桃山時代 | |||
小堀遠州書状 | 江戸時代 |
特別講演 | 12月3日(日) 14:00から講堂にて |
「日本の書の特色-仮名を中心に-」 | 五島美術館副館長 名児耶 明氏 |
日曜美術講座 | 12月10日(日) 14:00から講堂にて |
「一字一仏の経典 -新出の一字宝塔経断簡へのアプローチ-」 |
当館学芸員 古川攝一 |
講座 美術の窓 | 12月17日(日) 14:00から講堂にて |
「江戸時代の絵入特製用箋」 | 当館館長 浅野秀剛 |
列品解説 | 毎週土曜日14:00から展示場にて(当館学芸部による) |