自在な描線とともに墨の濃淡やぼかしを駆使する水墨画は、東アジア特有の絵画の形式です。たんに対象の形を捉えるだけでなく、移ろう大気や光、人や動物が発する声や音、そこに宿る精神性といった見えないものまで表現できる点は水墨画ならではでしょう。中国・唐代に成立した水墨画は、鎌倉時代の日本に伝わり、室町時代を代表する絵画となりました。
大和文華館の水墨画コレクションは、可翁、愚谿に代表される初期水墨画に始まり、周文、文清、雪舟、雪村、狩野元信、尾形光琳、伊藤若冲、浦上玉堂など、水墨画壇を彩る画家たちの作品が所蔵されます。彼らは画中にその名前を残すことで、自分の作品であることを示し、画技を競いました。
本展覧会では所蔵する7件の雪村作品を同時に公開するとともに、館蔵水墨画の名品を展示します。日本絵画史において重要な水墨画の流れをたどります。個々の作品から窺える画家の個性、その競演をお楽しみ下さい。
【鎌倉・南北朝時代】 | |||
羅漢図(眉間寺旧蔵) | 鎌倉時代 | ||
白衣観音図 | 愚谿右慧筆 | 南北朝時代 | |
重要文化財 | 竹雀図 | 可翁筆 | 南北朝時代 |
【室町時代】 | |||
重要文化財 | 維摩居士像 | 文清筆 | 室町時代 |
松梅佳処図 | 室町時代 | ||
重要美術品 | 奔湍図 | 伝狩野元信筆 | 室町時代 |
重要文化財 | 山水図屏風 | 伝周文筆 | 室町時代 |
重要文化財 | 呂洞賓図 | 雪村周継筆 | 室町時代 |
重要文化財 | 自画像 | 雪村周継筆 | 室町時代 |
重要文化財 | 花鳥図屏風 | 雪村周継筆 | 室町時代 |
【江戸時代】 | |||
雪舟写山水図 | 尾形光琳筆 | 江戸時代 | |
鶏図 | 伊藤若冲筆 | 江戸時代 | |
鱈図 | 円山応挙筆 | 江戸時代 | |
殿様蛙行列図屏風 | 渡辺南岳筆 | 江戸時代 | |
澗泉松声図 | 浦上玉堂筆 | 江戸時代 |
特別講演 | 6月17日(日) 14:00から講堂にて |
「雪村の画業とその魅力」 | 千葉市美術館館長 河合正朝氏 |
日曜美術講座 | 6月24日(日) 14:00から講堂にて |
「日本水墨画の誕生」 | 当館学芸員 古川攝一 |
講座 美術の窓 | 6月3日(日) 14:00から講堂にて |
「墨摺版画の魅力」 | 当館館長 浅野秀剛 |
文華苑講座 | 5月27日(日) 14:00から講堂にて |
「日本・中国および欧米のボタンの歴史と文化」 | 島根大学名誉教授 細木高志氏 |
列品解説 | 毎週土曜日14:00から展示場にて(当館学芸部による) |