後援:奈良県教育委員会・奈良市教育委員会
賞楓図 張風筆
螺鈿花卉文筆
豊かな教養をもって詩書画に親しみ、自らもそれを作る人々―文人は、東アジアにおいては文化の重要な担い手でもありました。彼らは友人との語らいや名勝への旅など、日々の感慨に応じて、墨を磨って筆をとり、その想いを多彩な作品へと昇華させていきました。
文人文化の嚆矢である中国では、早くから書斎の文房具などにも文人の雅趣が反映されました。特に硯・墨・筆・紙は「文房四宝」と呼ばれて重んじられ、文人の洗練された美意識に呼応して、すぐれた素材、意匠の作が多数生み出され、伝えられました。そして中国の成熟した文人文化は、日本と朝鮮にも波及していきます。東晋の陶淵明(365-427)、北宋の蘇軾(1037-1101)などを文人の理想像として共有しながら、各々が中国の文人画様式を取り入れた絵画、書斎道具などを生み出し、東アジアの文人世界は、より多様な広がりをみせるのです。
本展観では、中国、日本、朝鮮における文人の書画と書斎道具を展示します。文人達が愛した秋の季節に、東アジア文人の豊かな精神生活を感じていただければ幸いです。
【文房の美-文人の書斎道具-】 | |||
五彩荷葉硯 | 中国・明時代 | ||
龍図墨 | 程君房作 | 中国・明時代 | |
螺鈿花卉文筆 | 中国・明時代 | ||
青花透彫蛙蓮華算木文角水滴 | 朝鮮・朝鮮王朝時代 | ||
赤絵龍文柏葉形筆洗 | 奥田頴川作 | 日本・江戸時代後期 | |
【筆墨の美】 | |||
七絶詩 | 文徴明筆 | 中国・明時代 | |
賞楓図 | 張風筆 | 中国・清時代 | |
墨蘭図 | 鄭燮筆 | 中国・清時代 | |
葫芦図 | 呉俊卿筆 | 中国・民国時代 | |
【山水の美】 | |||
重要文化財 | 秋塘図 | 伝趙令穣筆 | 中国・北宋時代 |
冬景山水図 | 陸治筆 | 中国・明時代 | |
秋林罷釣図 | 徐枋筆 | 中国・清時代 | |
澗泉松声図 | 浦上玉堂筆 | 日本・江戸時代後期 | |
山水図 | 「李長孫」落款 | 朝鮮・朝鮮王朝時代 | |
【文人の日々-書・旅・友-】 | |||
聴松図巻 | 王翬・楊晋合作 | 中国・清時代 | |
山水図冊 | 方士庶筆 | 中国・清時代 | |
春林書屋図 | 呉春筆 | 日本・江戸時代後期 | |
冠岳夕嵐図 | 鄭敾筆 | 朝鮮・朝鮮王朝時代 | |
ほか |
特別講演 | 8月27日(日) 14:00から講堂にて |
「中国文人の肖像と文房具―理想の自己を求めて―」 | 東京大学東洋文化研究所 准教授 塚本麿充氏 |
日曜美術講座 | 9月24日(日) 14:00から講堂にて |
「故郷を描く-明・清時代蘇州文人を中心に-」 | 当館学芸員 都甲さやか |
美術の窓 | 9月10日(日) 14:00から講堂にて |
「広重画『東海道五拾三次』の刊行年と取材源」 | 当館館長 浅野秀剛 |
列品解説 | 毎週土曜日14:00から展示場にて(当館学芸部による) |