ブックタイトル社寺の風景
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社寺の風景
境内の景観、または安置される諸像を描く「春日社寺曼荼羅」とは異なり、南円堂本尊像のみを描く作品は他に類例がない。頭上の宝冠には比丘形の化仏が表されており、治承の兵火後、康慶一門によって再興された尊像ではなく、当初像を意識した復古的な描写である点も注目される。これらの作例から少し時代が降るが、当館所蔵「春日宮曼荼羅」(挿図1)は、東西両塔の他に、文明十一年(一四七九)に焼失した四恩院十三重塔が描かれ、画面上部には、当時考えられていた春日本地仏の全てが雲に乗って表現される点が特徴である。展覧会には四点の春日宮曼荼羅が出陳されるが、同じ神域を描いているにも関わらず、細部の図様には差異が認められる。さらには、本殿一帯を捉える視点の角度、画面中央を貫く参道のうねり、たなびく霞の幅や配置にも違いが認められ、描いた絵師や制作年代を示す重要な手がかりと考えられる。何れの作例も画中に人物は認められず、神域そのものの聖性が重視されている。ところで、春日宮曼荼羅の図像が定型化し、盛んに描かれると、これに倣い、周辺に位置する神社の視覚化が促された。天理市櫟本にある和爾下神社の神域を描いた「柿本宮曼荼羅」(当館蔵・挿図2)、京都と奈良の県境に位置する笠置寺の伽藍を描き込んだ「笠置曼荼羅」(当館蔵・挿図3)に代表される。また、「柿本宮曼荼羅」と画面構図に多くの共通性が認められる「生駒宮曼荼羅」(奈良国立博物館蔵・作品番号4)も出陳される。奈良県生駒市の生駒山に鎮座する、生駒神社(往馬坐伊古麻都比古神社)の景観を描いたものであり、正面観の強い参道と社殿の配置、画面下部に描かれた摂末社の構成が類似する。また、比叡山麓に祀られる神々を描いた「日吉山王宮曼荼羅」も多数の作例が遺されている。最澄が延暦寺を建立した際、比叡山に鎮座していた大山咋命と大己貴命を鎮守として迎えて以降、天台の信仰の広がりとともに、日吉山王諸神への信仰も高まった。大山咋命は東本宮(二宮)に、大己貴命は西本宮(大宮)に祀られるが、これらに摂社や末社を加えた山王二十一社が形成されている。当館所蔵の「日吉曼荼羅」(挿図4)は、正面観で十の社殿が捉えられ、各社殿には本地仏が描かれる。その尊容から山王上七社と中七社のうちの三社(聖女社・大行事社・早尾社)を描いていることが分かる。一見すると無作為に社殿が配されているように見えるが、画面最上部に描かれるのが八王子社であり、東本宮(二宮)、西本宮(大宮)をはじめとした各社殿の配置は、実際の日吉大社境内の社殿配置と近似する。現実の社殿配置と社格をおおよそ考慮した上で、一図に再構成されている。各社殿の精緻な建築描写も特筆される。軒先には懸仏が、回廊には獅子と狛犬が表されており、当時の様子を偲ぶことが出来る。顔料の剥落が惜しまれるが、本地仏に見られる伸びやかな描線が美しい。この他、展覧会には、石清水八幡及びその周辺一帯を描いた作例が出陳される。同社の神域を描いた「石清水八幡宮曼荼羅」には、大倉集古館及び根津美術館所蔵作例のように俯瞰した視点で大きく景観を捉えたもの、京都国立博物館や栗棘庵所蔵作例のように社殿の描写に焦点を当てたものが挙げられる。京都国立博物館所蔵作例(作品番号5、以下、京博本と略称)は、本殿と若宮・若宮殿・武内・高良の摂社、及びその本地仏が描かれる。社殿は正面観が強く、本図が礼拝対象として描かれた挿図1挿図2挿図35