グループCEO・社長メッセージ

(全体更新日:2023年2月7日)

代表取締役会長 グループCEO 小林哲也と代表取締役社長 小倉敏秀

近鉄エクスプレスが加わり事業領域・エリアを拡大。
社会の発展と、次代にわたる「幸せ」づくりに貢献します。

近鉄グループのチャレンジ

近鉄グループの歴史は、1910年に大阪・奈良間を結ぶ奈良軌道が設立されたことに始まります。以来、鉄道事業を中心に、事業を通じて地域の発展と幸福に寄与することを変わらぬ役割と考え、事業を営んでまいりました。

この間、幾度もの経営の転機がありました。象徴的なものをご紹介します。

1959年秋、近畿・東海を縦断した伊勢湾台風により、三重県内の鉄道施設が壊滅的な被害を受けました。それまで、名古屋線と大阪線の軌間を統一することは長年の経営課題でありました。名古屋線の復旧にあわせて軌間拡幅工事を実施し、一気に大阪・名古屋間の軌間統一を達成して同区間の直通運転を実現しました。当時の社長、佐伯勇の果断即決が、その後の近鉄特急ネットワークの基盤を築きました。

その四十数年後、プロ野球界でセ・リーグとパ・リーグの一リーグ化構想が浮上した2004年には、これを契機にかねてよりの懸案であったレジャー事業の経営体質改善を図るため、大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブを統合し、プロ野球事業から撤退しました。プロ野球からの撤退は当時、社会的に大きな反響を呼び世間の厳しい目にさらされましたが、ファンの皆さまのご理解を得ながら不退転の決意で実現しました。

世の中の変化が激しくなり、お客さまのニーズも多様化していく中で、2015年には近畿日本鉄道を中心とする体制から純粋持株会社制へ移行しました。グループの経営機能の強化、各事業会社の自立的な経営を目指すとともに、多面的に事業を展開しやすい体制とすることにより、グループ事業発展の礎となる仕組みを築いてまいりました。

そうした中、2020年からのコロナ禍で、交通やレジャー、流通など個人消費に関わる事業を中心に展開し、事業ポートフォリオがBtoCに偏っていた当社グループは大きな打撃を受けました。また、人々の考え方や、働き方をはじめとする生活様式が、従前の形には戻らないことが明らかになってきました。この危機は将来にわたって続く公算が高いことから、現状を果敢に改革し時代の先を行く新たな戦略が必要と判断し、2021年、まず工業用製品で確固たる地位にあるサカエをグループに迎え入れ、2022年には物流業界で世界的にフォワーディング事業を展開する近鉄エクスプレスを完全子会社にいたしました。

そのねらいをお話しします。私たちは事業を通じて人々の幸せなくらしに貢献する企業グループであり続けたいと考えています。そのためには、企業として適正な利益を創出し社会に還元していく、いわゆる健全経営を続ける必要があります。人口減少により国内市場には限界がある中、グローバルな市場に打って出て成長性を、また、対個人に加えて対法人の事業を強化することでリスク耐性を高めます。グローバル化はもとより、連結売上や営業利益においてBtoB事業がBtoC事業に匹敵することとなり、事業規模が大きく拡大するとともに、バランスのとれたポートフォリオとなります。さらに今後、グループ内の連携を強化し、持続的に近鉄グループの経済的価値を高めていきます。

もう一つのねらいが、グループ内の企業風土の変革をさらに進めることです。私たちは地域に根ざした歴史・文化・生活を大切にして、事業基盤を拡大してきました。その過程において、祖業である鉄道を中心に培ってきた安全第一の精神を基本に、時代の先端を切り拓く挑戦を重ね、純粋持株会社制への移行を機に各事業の特性に応じた風土の構築を推進しています。そこに、アグレッシブな社風の下、グローバルに事業を展開する近鉄エクスプレスが加わり連携することによって、より広い視野を持った判断を迅速に行い、リスクをおそれず挑戦する企業風土を培ってまいります。このことを近鉄グループの成長の源泉にしたいと思っています。

これらを通じて、沿線だけでなくより広い世界で末永く社会に貢献し、社会的責任を果たしてまいります。

コロナ禍からの脱却に向けた、中期経営計画の着実な実行

2021年5月に「コロナ禍から回復し、新たな事業展開と飛躍に向かうための経営改革」を基本方針として「近鉄グループ中期経営計画2024」を策定、重点施策を迅速に実行しています。

その一環で、ホテル事業を2021年10月より所有・直営型と運営受託型の二軸経営に移行しました。ウェスティン都ホテル京都、志摩観光ホテルほか古くから地域に根付いた伝統を有し、今後とも地域の顔となるフラッグシップホテルなどは引き続き資産を保有して運営していきます。一方、8つのホテルについては運営に特化することによって柔軟で斬新な挑戦を行っていきます。豊富な投資実績とホテル経営の知見を有するブラックストーン社との協業を進めることによって、ホテル資産の価値と業績向上を図ります。都ホテル京都八条、ホテル近鉄ユニバーサル・シティでは、同社による数十億円の改装を進めており、ホテルの魅力を高めます。

また、鉄道沿線地域で生活基盤となる様々なサービスを提供し、今後とも社会的使命を果たしていくためには、中心となる鉄道事業の健全性を維持・強化する必要があります。2022年9月、近畿日本鉄道は、実質的に1995年以来となる旅客運賃の改定につき、国土交通大臣の認可を得ました。公共性が高いサービスの対価として、総括原価方式の下で運賃が認可されていることの責務を自覚し、計画する様々な設備投資を実施して社会的要請に応えることはもとより、鉄道事業の仕組み・体制の変革、生産性の向上、新規需要にもつながる魅力の創出を進めます。効率的な鉄道運営の形として、自動運転の実用化に向けても取り組み、より安全で持続性が高い輸送の提供を通じて社会に貢献します。このように、将来にわたり安全・快適なサービスを提供し、沿線の価値向上を図っていきます。

サステナブルな経営を進め、万博・IRから未来へ

代表取締役会長 グループCEO 小林哲也

2025年には大阪の夢洲で大阪・関西万博が開催され、その先には統合型リゾート・IRが計画されており、日本各地や海外からの来訪者を拡大する好機です。日本の歴史上、奈良・京都は政治・文化の中心、大阪は経済拠点、神戸は港町として発展してきました。多彩なバックボーンを有する街が多極分散で立地する、関西の魅力を高める努力を重ね、万博やIRの来訪者に訴求することによって、長期的に交流人口・定住人口の拡大を図り、関西の活力を持続的に高めていく必要があります。

当社グループでは、2021年、「近鉄グループサステナビリティ方針」を策定し、くらし、まちづくり、観光、環境、安全・安心、ガバナンス、人財に関するサステナビリティの重要テーマを定めて、事業の拠り所としています。まちづくりでは「ネットワークの充実による、元気なまちづくり」を掲げています。

万博、IRさらにその先をにらみ、当社グループも関西の活力向上の一翼を担って、夢洲のお客さまに乗り換えなしで奈良や伊勢志摩にお越しいただく直通列車の開発、ターミナルである大阪上本町のハブ機能強化などの計画を進めていきます。上本町を大阪の東西軸における東の拠点として整備するとともに、あべのハルカスを中心とするあべの・天王寺エリアとの連携を強化します。行政や関係の皆さまと一体となって、上本町・あべの・天王寺のエリア全体が、文化・経済の両面で大阪の拠点となるよう取り組んでまいります。また、ハード・ソフトの様々なネットワークを提供する事業者として、大阪府、奈良県、三重県下の拠点駅などで、駅を中心に地域特性を踏まえたコンパクトで環境負荷の小さいまちづくりを進め、地域の魅力と沿線価値を高めていきます。

環境に関する取組みとしては、気候変動のリスクを認識して激甚災害への対策を計画的に推進しているほか、鉄道を中心に省エネ施策を進めて省CO2に貢献します。また、社会全体での低炭素化、効率的な資源活用の観点から、エネルギー効率が高く環境負荷の小さい鉄道へのモーダルシフトを、関係者とともに進める必要性を強く感じています。

次代の世界に向け、近鉄グループが果たす役割

代表取締役社長 小倉敏秀

さて、事業を営む本質的な目的は、「事業に関わる様々な人たちが幸せに生活できること」にあると思います。お客さまはもとより、サービスの提供に関わる従業員や取引先の皆さま、事業を支える地域社会や株主・投資家の皆さまなど様々なステークホルダーの幸せが実現してこそ、事業も社会も持続可能なものとなります。そしてそれは、今を生きる私たちだけの幸せにとどまらず、次代の幸せにつなげることが大切です。

そのために近鉄グループが取り組むことを申し上げます。

図らずもコロナ禍により「勤務地から離れた場所で居住して生活できる」社会が到来しつつあり、政府もデジタル田園都市国家構想として、東京圏への過度な一極集中の是正と地方の社会課題解決を推進しています。例えば東京で仕事をする人が当社沿線に居住する機会が生まれてきました。これを現実のものとするには、沿線の奥深い魅力が認知されるよう情報発信するとともに、物心両面で現在のくらしに劣らぬ豊かさを提供することが必要です。地域の皆さまとともにそうした場を整えることは、長年にわたり地域に根ざした事業運営を続けてきた当社グループの務めです。

また、新たに人を迎え入れるには、地域の活力を高めなければなりません。そのためには、外部の人の力を借りデジタル技術を活用しながら、地場産業の再興や文化の継承を図る必要があります。当社沿線では、紀伊山地の森林を擁する奈良県南部における林業、伊勢湾・英虞湾にのぞむ伊勢志摩の漁業と、自然資源を活かした産業も栄えてきましたが、環境の変化や後継者不足などで大変厳しい状況です。そのような中で、豊かな森林や海を保全し、共生しながら、時代にあった形で社会課題解決に貢献する産業として再生していくこと、また、歴史深い沿線で引き継がれてきた伝統的な文化を後世に受け継いでいくこと、それらの過程で様々な人の交流を生み出すことが、次代につながる地域づくりだと考えます。幅広い事業を営む近鉄グループとしてお手伝いできないかと考えています。

戦後の日本社会では、自身が社会の中で周囲の人々に支えられていることを自覚せず、個人の物質的な満足感を過度に求める風潮が強かったと言えます。過度な個人志向、利便性志向の生活では、豊かで幸せなくらしは続きません。ある時は生産者、ある時は消費者など、同じ人が様々な顔をもち、困ったときには助け合い何気ない交流がある社会に、次代にもつながる「幸せ」があると思います。

コロナ禍、不安定な国内外の情勢、地球環境問題など、未来の展望が描きづらい今日にこそ、110年以上の歴史をもつ近鉄グループとして、社会の発展に貢献する責務があります。沿線を中心に培い、地域の幸せに貢献してきた企業DNAを、より幅広い領域・エリアで展開していきます。そして、ありたい未来の姿を想像し、そのために必要なプランを考える未来志向の経営を行い、次代にわたる「幸せ」づくりに貢献してまいります。

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